当期純利益だけでは不十分。借入金返済の原資を考える

当期純利益だけでは不十分。借入金返済の原資を考える 経理

こんな悩みはありませんか?「借入金の返済には当期純利益を充てればいいんでしょ?」と思い込んでいませんか?もしかしたら、あなたは借入金返済の原資について、本当の理解ができていないのかもしれません。

確かに当期純利益は、借入金返済の重要な原資の一つです。しかし、それだけで十分とは言えないのが実情なのです。借入金返済の原資は、もっと多角的に捉える必要があります。

この記事では、借入金返済の原資について、損益計算書や貸借対照表から読み解く方法をお伝えします。また、理想的な借入金返済のバランスについても考察していきます。あなたの会社の借入金返済は大丈夫ですか?ぜひ、この記事を参考に、借入金返済の実態を見直してみてください。

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借入金返済の原資は当期純利益や減価償却費だけではない

当期純利益や減価償却費が返済原資という誤解

「借入金の返済原資は当期純利益や減価償却費だ」と考える経営者は少なくありません。確かに、銀行から借入をする際の審査書類には「返済原資は税引後利益+減価償却費」と記載されているケースが多いものです。しかし、これは借入金返済の原資として当期純利益や減価償却費を充てることを意味しているわけではないのです。実際の返済原資はあくまでキャッシュ、つまり現金及び預金です。損益計算書上の数字である当期純利益や減価償却費は、本来借入金の返済に直接充てることはできません。では、なぜ銀行はこのような表現をするのでしょうか。その理由を探っていきましょう。

短期借入金は当期純利益で返済不要

借入金には、返済期間が1年以内の短期借入金と、1年を超える長期借入金があります。このうち短期借入金は、本業で得た利益を原資に返済するというよりも、決算期に返済し、また新たに借り入れるというサイクルを繰り返すことが一般的です。つまり、短期借入金の返済原資を当期純利益に求める必要性は低いと言えるでしょう。一方で長期借入金は、事業で得た利益を積み上げていくことで計画的に返済していく必要があります。ただし、長期借入金の返済原資も当期純利益だけとは限りません。

長期借入金の返済原資は多岐にわたる

長期借入金の返済原資は、余剰資金から支出されます。この余剰資金は、本業での利益に限らず、資産売却などによるキャッシュインや、新たな借入によって調達されたお金など、様々な要因によって生み出されます。当期純利益は余剰資金を生み出す一要因に過ぎないのです。例えば、不動産を売却して得たキャッシュを借入金返済に充てることもありますし、借換えによって新規に調達した資金を返済に回すこともあるでしょう。このように、長期借入金の返済原資は当期純利益だけに限定されるものではありません。銀行の審査書類に「返済原資は税引後利益+減価償却費」と記載されているのは、あくまで一つの目安として示されているに過ぎないのです。

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損益計算書と貸借対照表から見る借入金返済の実態

貸借対照表から返済額を把握

借入金の返済額を正確に把握するには、貸借対照表を確認する必要があります。貸借対照表には、期首と期末時点での借入金残高が記載されています。期首と期末の借入金残高を比較することで、その期に返済した元金の額を知ることができるのです。例えば、期首の借入金残高が1億円、期末が9000万円だったとすると、その期の返済額は1000万円ということになります。また、返済額のうち利息部分については、損益計算書の営業外費用に記載されている支払利息を確認しましょう。こうして貸借対照表と損益計算書を突き合わせることで、借入金返済の実態を詳しく知ることができます。

損益計算書との関係 – 支払利息と元金返済

借入金の返済は、元金部分と利息部分に分けられます。このうち損益計算書に計上されるのは、利息部分である支払利息のみです。元金返済額は、キャッシュの流出を伴いますが、損益計算書には表れません。したがって、損益計算書から直接的に返済額を読み取ることはできないのです。先に見たように、元金返済額は貸借対照表の借入金残高の増減から把握するしかありません。一方で、支払利息は営業外費用として損益計算書に記載されます。支払利息が多額だと、利益を圧迫する要因となります。金利負担の重さを確認するためにも、損益計算書の支払利息の額には注意が必要です。

キャッシュフロー計算書で返済原資を詳しく確認

借入金返済の原資がどこにあるのかを詳しく知るには、キャッシュフロー計算書を確認するのが有効です。キャッシュフロー計算書は、一定期間におけるキャッシュの流れを示したものです。営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローに区分されており、借入金の返済は財務活動によるキャッシュフローに含まれます。営業活動によるキャッシュフローがプラスであれば、本業で獲得したキャッシュを返済原資に充てられることになります。一方、マイナスであれば返済原資が不足していることを意味します。投資活動によるキャッシュフローがプラスであれば、資産売却などで得たキャッシュを返済に回せます。このようにキャッシュフロー計算書を見れば、どの活動から借入金返済の原資を得ているかが一目瞭然なのです。

理想的な借入金返済のバランスを考える

利益と借入金返済のバランス – 財務安全性のポイント

借入金は事業発展のために必要な資金調達手段ですが、返済負担が重くなりすぎては経営が圧迫されてしまいます。安全性を保ちつつ借入を活用するには、利益と借入金返済のバランスを考えることが大切です。具体的には、事業から得られるキャッシュフローを借入金返済の原資に充てられるかどうかがポイントになります。キャッシュフローの実力値とも言える「当期純利益+減価償却費」の額を意識し、借入金残高や約定返済額とのバランスを見る必要があるでしょう。借入金残高が「当期純利益+減価償却費」の5倍以内なら、5年程度で返済できる計算になります。返済負担が長期化、高止まりする兆候がある場合は、早めに対策を講じることが肝心です。

返済計画立案時の着眼点

借入を行う際は、事前にしっかりとした返済計画を立てることが欠かせません。返済計画の立案にあたっては、返済原資をどこに求めるかを明確にしておくことが重要です。事業から生み出すキャッシュフローを返済原資の中心に据えつつ、不足分を資産売却などで補うといった具合に、バランスの取れた返済計画を心がけましょう。また、金利負担の影響を予測することも大切です。金利上昇局面では、想定以上に支払利息が膨らむ可能性があります。返済計画は定期的に見直しを図り、経営環境の変化に柔軟に対応できるようにしておくことが肝要と言えるでしょう。

銀行との付き合い方 – 返済条件の見直し提案

借入金の返済が困難になってきた場合、銀行との交渉を検討する必要があります。返済条件の見直しを提案することで、返済負担を和らげてもらえる可能性があるのです。例えば、返済期間の延長や金利の引き下げを求めるといった方法が考えられます。ただし、銀行を説得するためには、説得力のある返済計画を示す必要があります。財務データを基に資金繰りの見通しを立て、どの時点でどれだけの返済が可能かをシミュレーションしておきましょう。また、返済の原資をどのように確保していくかについても、具体的に提示することが求められます。銀行との信頼関係を築いておくことも大切です。日頃から銀行とコミュニケーションを取り、経営状況を丁寧に説明しておくことで、返済条件の変更にも応じてもらいやすくなるはずです。

当期純利益だけでは不十分。借入金返済の原資を考えるのまとめ

借入金の返済原資は、当期純利益だけではありません。貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書など、財務諸表を多角的に見ることで、より正確に借入金返済の実態を把握することができるのです。

特に、貸借対照表の借入金残高の推移や、キャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフローは重要なポイントです。借入金返済のバランスを考える上では、「当期純利益+減価償却費」の額を意識しておくことも大切でしょう。

借入金は事業発展には欠かせない資金調達手段ですが、返済負担とのバランスを保つことが何より大切です。財務の安全性を意識しつつ、計画的に借入金を活用していくことが、健全な経営につながるのです。

ポイント 内容
返済原資の多角的な把握 当期純利益だけでなく、貸借対照表やキャッシュフロー計算書も確認
貸借対照表の着目点 借入金残高の推移を確認
キャッシュフローの重要性 営業活動によるキャッシュフローがプラスかどうかを確認
バランス指標 「当期純利益+減価償却費」と借入金残高のバランスを意識
財務の安全性 返済負担とのバランスを保ちつつ、計画的に借入金を活用